Sunablog

東京に出た島根の学生の備忘録。

地方創生は本当に日本にとって必要なのか

「地方創生は日本にとって本当に必要なのか」

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今回のブログは、何と僕の大学での進級論文(案)です。

なんか提出するだけじゃもったいないなと思ったので投稿します笑

やっていいのか知らんけど、まあ案なので。笑

結構面白い内容になってると思います。

 

 

 

目次


はじめに


<第一章 地方創生とは何なのか>

 1.地方創生の定義

 2.国策としての地方創生

  ①地方創生が国策に加わった背景

  ②具体的な地方経済への政策

<第二章 地方創生の必要性>

 1,東京一極集中メリット・デメリット

  ①メリット ②デメリット

 2.地方人口分散のメリット・デメリット

  ①メリット ②デメリット

<第三章 結論、その理由>

 1.日本が地方創生を進める意義

  ①世界での課題先進国としての意義

  ②多様な生き方の創造のための意義

まとめ

 

 

 

はじめに

 「地方創生」と言う言葉は,20世紀に入り日本の人口構造や産業,その他様々な社会的背景が変わりつつある中で,特に言及されてきた話題であろう。少子高齢化により,真っ先に影響を受けたのは日本の中で「地方」と言われる,三大都市圏以外の地域(国土交通省が定義)である。政府は,地方の再生こそが日本の経済再建の秘策と考え,あらゆる政策を策定してきた。その政策は成果を出しているものもあれば,地域住民から非難を受けるものまで様々なものが混在する。この論文ではそれらの政策をまとめて指した「地方創生」は日本にとって本当に必要なのかと,当たり前とされてきた国の方針を再度定義していく。

 

 

<第一章 地方創生とは何なのか>

1.地方創生の定義

地方創生と一言で言っても,意味合いが広すぎるので,ここで定義する。

「地方創生」=「東京一極集中・地方から東京圏への人口流出(特に若い世代)に歯止めをかけ,地方に住み,働き,豊かな生活を実現したい人々の希望を実現する。

首都圏の活力の維持・向上を図りつつ、過密化・人口集中を軽減し,快適かつ安全・安心な環境を実現する」そして,その結果,日本の人口減少の傾向を抑えるもの

と定義する。

 

2.国策としての地方創生

 ①地方創生が国策に加わった背景

「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が平成26年12月27日に閣議決定され,地方自治において国の方針として「地方創生」が組み込まれた。この背景には日本社会全体の情勢と,国としての思惑がある。安倍政権は具体的な指標として,「50年後に人口1億人を維持する目標」を掲げた。このことからも地方創生の中心的な目的として「日本の人口を維持する」というものがあることが見て取れる。人口に関する研究・レポートとしては増田寛也氏を座長とする「日本創成会議」の人口減少問題検討分科会が発表した「増田レポート」が最も有名であろう。このレポートでは,2040年までに896の市町村が消滅する可能性があるという衝撃の調査結果がまとめられた。この「消滅する可能性のある市町村」は「消滅可能性都市」と定義され、その定義基準は「2040年時点で20~39歳の女性人口が半減する自治体」であるか否かである。その基準に基づいて「消滅可能性都市」に定義されてしまったのが,全体の全国約1800市町村のうち約半数に相当している。

 

【図1】2010年から2040年の20〜39歳の若年女性人口の変化率で見た自治体数

f:id:sunapong:20180130005355p:plain(出典)国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口推計」※福島県は調査対

 

 

このように,具体的な数値で,日本の人口の減少の度合いが提起され,よりその深刻度が鮮明になった昨今,政府として「地方創生」を掲げ,日本全体として人口減少対策に乗り出さざるを得ない状況になった。これが「地方創生が日本の国策に加わった背景」の一つである。

 

 ②具体的な地方経済への政策

政府として,地方経済に対してどのような施策を打っているのか,具体的に見ていく。平成28年度に経済産業省の地域経済産業グループが発表した資料によると,政府は情報支援・人的支援・財政支援を「地方創生版 三本の矢」として,地方経済の状態向上並びに,維持・促進に努めている。情報支援の矢では地域経済分析システム(RESAS)の開発・普及促進,人的支援の矢では地方創生コンシェルジュ・地方創生人材支援制度,財政支援の矢では地方創生加速化交付金,地方創生深化のための新型交付金などを具体的に推し進めている。これらの政策を軸に,地域経済の活性化をはかり,さらなる人口の減少や地方の産業の生産性の低さを改善しようとしている。これらの具体的な政策の内容や,最新の平成30年度の地方創生関連予算が合計約2兆8,000億円という巨額の予算編成を見ても,いかに地方の衰退が日本として最重要課題に位置付けられていることが容易に予想できる。

 

<第二章 地方創生の必要性>

1.東京一極集中のメリット・デメリット

前章でも触れていたように、国としては国を挙げた政策により地方の経済を活発化させ、地方に三大首都圏以外の経済地域を生み出すことによって、人口を分散させたいという狙いがある。しかし、この人口集中の問題は、違う観点から考えるとメリットになりうることもある。様々な観点でこの人口集中について見ていきたい。

 

①人口集中のメリット

人口が集中することは、国策の内容から見ると全面的にいけないことされているように見えるかもしれないが、観点を変えればメリットも存在すると考える。人口が集中するということは、単純に人と人とのコンタクトが取りやすい。地方の中山間地域のような場所では、ある民家の一番近くの民家が一山超ないと着かないというところはざらにある。これでは、人が人と直接コミュニケーションを図ることは必然的に難しくなってしまう。しかし、東京の中心地を例に挙げて考えると、一定の範囲の中で人がひしめくように居住している。これも単純に見ると、人と人の距離が近いと言える。そして必然的に人が人に会う機会は多くなる。そしてこれは時に、経済活動の生産性を上げることにもつながる。これは有名な話だが、インターネットの広告代理店である株式会社サイバーエージェントは、同社員に対して、自分の所属するオフィスの最寄駅から2駅以内に住む社員には3万円の補助を出すという補償までしている。資金を投じてまで、これをやる意味はそのまま「社内コミュニケーションが活性化するから」というところにある。社員同士のコミュニケーションが円滑になれば、仕事上の関係もより円滑になりやすく、それが信頼につながり仕事の生産性にもつながるということである。情報化社会となり、遠隔でも仕事ができるこのご時世に、一ITベンチャーが首都圏にオフィスを構え、さらに社員が住む場所さえも集中させる方向に持っていているという、何か違和感が否めないような状況が起きている。経済学者のエドワード・グレイザーは「情報テクノロジーの発達が、むしろ人と人との間の直接的なコンタクトの需要を生んでいるのだ。」と述べている。いつでもどこでも人と繋がることができ、仕事上の会議なども、遠隔でできるようになって、一見、リアルでの直接のコミュニケーション必要にないと思えるようではあるが、前述した例のように、逆に需要が高まっていると言える。これらのことから、人口集中は経済的な面からしても十分にメリットがある。

 

②人口集中のデメリット

人口集中した時のデッメリットとしてあるのは、マクロな問題でいうと「人口減少」である。この原因はいくつかあり、それらが相互に作用することによって起こる。中でも一番影響を与えているのは「子育て環境の不充実」である。最近、社会問題としてよく耳にする「待機児童問題」がこれを如実に表していると言える。そして,図2が示している通り,待機児童はやはり都市部に多く,それが負担となり,子供を多く産めなくなってしまう。

 

【図2】全国待機児童マップ(都道府県別)

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(出典)厚生労働省保育所等関連状況取りまとめ」

 

 

加えて,核家族化が進んでいる現代で,特に東京では地方出身者が東京に上京してきて,働いているという家庭が多いということもあり,育児を手伝ってくれる祖父祖母が,地方にいる。地方出身で実家が地方にあるので当然である。反対に,地方では家族ぐるみ,地域ぐるみで子供を育てるということが多い。女性の社会進出が掲げられ,女性のキャリア的な状況は改善されてきた。しかし,それに伴い専業主婦が少なくなり,共働きの家庭も増えた。さらに,働いている時に預かってくれる,面倒を見てくれる保育所や幼稚園がないとなると,ますます子育て環境の悪化が起こる。昨今では,出産に際し,産休期間をしっかり儲けることや,母親だけでなく父親にも育児休暇を取ってもらえるよう促す企業まである。「イクメン」で話題になったのが,育児環境の要素のそれである。しかし,これらの取り組みだけでは事態が根本的に変わらず,東京などの人口集中地の育児環境は悪くなる一方である。証拠に,2015年のデータで,東京の出生率は全国ワースト1.17のであり,1位で1.94の沖縄県とは,約0.8の差がある。単純に1人の女性が生涯産む子供の数が約1人分違うということである。

 

【図3】都道府県別出生率マップ

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(出典) 国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」|厚生労働省「人口動態統計」 HUFFPOST:都道府県別出生率が浮き彫りにする日本の課題:研究員の目

 

 

 

そういたった状況の東京に多くの若年人口が流れ込み,結婚し子供を産むとなると,日本の全体人口への影響は大きい。

そして,次は違った視点からのデメリットについて論じて行く。日本人の記憶に深く刻み込まれた,2011/3/11。東日本大震災である。これまで経験してきたことのないような規模の地震が,東北を中心に東日本を襲った。東京などの首都圏も例外ではなく,地震直後には都市機能は麻痺し,経済的な打撃も大きかった。今回は,震源に近かったものの,直下ではなかったので,被害はそこまでにとどまった。しかし,大震災後に提唱されたのが「首都直下型地震」である。これが起きた際には甚大な被害が容易に予想できる。このままの人口流入の状況が続き,さらに人口が増えたとすると,震災による死者も増えてしまう。東京に人口が一極集中するということは,それに伴い,経済的機能も東京に今以上に集中し,東京が潰れた時に,日本は国としての機能が極端になくなってしまう。

 

2.地方人口分散のメリット・デメリット

今度は反対に,これから今の国の方針と同様に,地方に人口が分散した場合,どんなメリットとデメリットが予想されるか論じて行く。

①地方人口分散のメリット

地方人口分散のメリットは国が期待していることのそれである。地方には,都市圏と比べ,自然もあり,そして子育てを助けてくれる家族や,近所の人たち,保育所・幼稚園なども多くあり,まず子育てで困ることはあまりない。全ての田舎とは言わないが,田舎には助け合いの文化がある場合が多く,都市圏よりは人と人の接点を持つ機会が多い。かつ,助け合いの文化があるので,子供が生まれ育てていく段階においては「その家庭の子」というよりは「その地域の子」として大切にされ,地域の人々総出で育てる。共働きをする家庭には嬉しい環境である。前項でも示したが,地方は出生率が高く,その環境下にいる子育てをする人口が増えれば相対的に人口増加に寄与することが予想される。

 

 

【図3】都道府県別出生率マップ 

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(出典) 国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」|厚生労働省「人口動態統計」 HUFFPOST:都道府県別出生率が浮き彫りにする日本の課題:研究員の目

 

 

 

UIターン促進を行動目標に掲げている都道府県や地方自治体では,このような「子育てのしやすさ」をウリにしているところがしばしば見かけられる。

前項で,デメリットとして紹介した震災などの災害の際にも,一つの地域が大きな被害を受けても,その他の地域がしっかりとした人口,経済力を兼ね備えていれば,日本全体として極端に経済機能が低下することはなくなる。

さらに,ここを一番強調したいのだが,人がある地域に移り住むと,そこで仕事が生まれ,それに伴い一つのライフスタイルが生まれる。このことは何を示しているかというと,人それぞれの適正にあった生き方(選択肢)が生まれるということである。昔までは,日本人の人生にはロールモデルが存在した。大学を出て,安定した会社に就職し,その会社に生涯雇用,その間に子供を産み育て,定年になればしっかりと退職金を受け取り,年金を受け取りながら安らいだ老後を送る…。こんなロールモデルは現代の日本には存在しない。大手銀行も,統合されることもあったり,日本の大手電機メーカーも軒並み業績が落ち,「安定した会社」など存在しない。それに伴い,生涯雇用されるなんて保証はどこにもない。年金も少子高齢化でもらえる保証もない。そんな試合の中で,これからの働き方,ライフスタイルはどんどん違ったものに変容してきているのは間違いない。そこで,「地方で生きる」という選択肢をこれからの若者に示すことができたらどうだろう。東京のような閉塞感のある,毎日人々がせかせかしているような中で日々に忙殺される生活に,合わない人だって絶対に一定数いる。その層に「地方で生きる」という選択肢を与えることができるということは日本にとっても限りなくプラスに作用する。そう確信している。

②地方人口分散のデメリット

これも前項の裏返しである。分散することによって,物理的に人と人との距離は遠くなる。故に,経済的に効率が悪くなることは多々ある。遠距離間でもののやりとりをする場合は,物流コストもかかる上に手間もかかる。一部では生産性が落ちることは必至である。生産性という観点でもう少し深く掘り下げると,人口が集中していることにより,当然企業やその他機関も集中するわけだが,それによって東京は世界でもトップクラスの経済的生産性を持っている。それを考慮すると,地方分散はその効率性をも分散しかねず,経済的生産性の観点から言うと,あまりよくはないのかもしれない。しかし,これは短期的な視点での話であるので,長期的に見て東京に人口を集めて留めておくことが得策なのかは不明である。

 

 

<第三章 結論、その理由>

1.日本が地方創生を進める意義

ここまで,「地方創生は本当に日本に必要なのか」と言う命題を様々な観点から考察し,思案してきたが,この論文の結論としては「必要」である。なぜ必要なのか。日本がこの人口減少や少子高齢化という課題に取り組み,「地方創生」を掲げる意義をこの章では論じて行く。

①世界での課題先進国としての意義

日本は地方創生を掲げ,国として全力をかけて課題解決に向けて進んでいかざるを得ない状況下にあり,これは世界のどの国よりも問題としての緊急性が高いことからも起因している。世界のどこよりも深刻で,解決が難しく,そして緊急性も高い。あと何年後かには,「日本の経済が成り立たなくなるのかもしれない」と言った不安が常につきまとっている。しかし,この状況を逆手に取れば,この深刻な状況を「チャンス」とも言える。ここまでの深刻さは,世界のどの国も経験したことがないのだ。つまり日本は世界の先端を行っている「課題」先進国なのである。課題先進国である日本が,もしこの課題を解決に導くことができたならば,世界各国がこれから国として成熟し,迎えるかもしれない今の日本と同じような課題に対して,その成功スキームを応用し,他国も解決に導くことにつながるとも期待できる。だからこそ「地方創生」を国として掲げ,解決例を作る必要が世界から見ても日本にはあるのだ。これを解決させにいかない手はない。

 

②多様な生き方の創造のための意義

前章の地方分散のメリットでも述べたが,これからの日本では働き方がより多様化していく。そして,地方創生はその多様化に寄与する大切な要素の一つだと考える。人の住む環境は,何をするのか,生きがいとして生きていくのかに並ぶほど,人の人生に影響を与えるものである。多様な生き方の創造には地方創生が必要なのである。そして,生き方が多様化すればするほど,日本の経済もフレキシブルになっていく。一人が一つの仕事をすることにととらわれず,様々な仕事をマルチにこなしていくことによって人口減少社会でも対応できるような仕組みになっていくことがこれからの日本にとって重要である。地方での生き方,居住があり他拠点で生活する人もこれから増えていく。それが場所にとらわれないしなやかな日本の経済活動につながり,相対的に日本の経済的生産性も上がると予想できる。これからの生き方の多様化,人口減少による人手不足に対応するすべとして,地方創生の持つ意義は大きい。

 

まとめ

地方創生とはかなり抽象的な概念で,時折,人々に本当に意味があるのかと揶揄されることがある。しかしそれは,本当に本質を理解した上での批判・意見なのであろうか。何のために地方創生はなされていて,地方創生関連予算として巨額な資金を投じているのかを意識して見ると,いろいろなことが見えてくる。単純に国としての経済力を上げるためであったり,その根源には人口減少を食い止めるためだという大義があったりするわけだが,それら,具体的に数字や目に見えるもの以外にも,「生き方」や「働きかた」,人個人個人としての幸福の追求がある。経済力を向上させるというのも,本質的な目的は日本人の幸福を達成するためである。GDPやら何やらが上がったところで,そこが抜けてしまっていては元も子もない。目的と手段が逆転してしまっていることがこの「地方創生」という話題を議論する上でも多発している。そして,そのズレが,重なり,効力を失ってしまう。

 「地方創生」は日本にとって必要である。そしてそれと並行して,地方創生を理解し,それを自らの思考や生活に「若者」が反映していくことが必要である。少子高齢化の日本の中では,これからより一層,若者の一人一人の質も求められてくる。「地方創生」を理解し,その意義を汲み取り,日本全体でこの問題に取り組んでいく必要は必至である。

 

 

 

そんな論文を書いた今日この頃。